【12月24日の「クリスマスやから、とっておきのええハナシ聴かしたろ」日記】
昨日の日記を書いていて、自分が「自動車学校」に通っていた今から三十年以上前のことを思い出した。
私は「地元」とはいえ倅が入校を希望した「自動車学校」より遥かに「田舎」の自動車学校に入学した。
そこを選んだ理由は何より「教習費用」が安かったからだったと記憶する。
なぜ余所の自動車学校よりそこの学費が安かったのかという理由を、入校して最初の「実技教習」第一時間目に思い知る。
素人の私にすら「少し狭いんちゃうのん?」と思わす「校内敷地練習コース」で、コースのド真ん中に放置されている「廃車」の前に連れていかれた。
「第一時限目は『ハンドル操作』を教習してもらいます」
最初は冗談かと思った。
壊れた廃車の運転席に座って教官の「はい、右。つぎは左」の指示に従い、一時間ひたすらキュルキュル何処までも回るハンドルを右へ左へ回し続けたのだ。
これはデパートの屋上のゲームセンターに置いてある十円玉を入れる「ジープ・ドライビングゲーム」より酷い。 いや、悲しいっちゅうか屋外だけに滅茶苦茶恥ずかしかった。
免許取得の適齢期の世代でもあったので、多くの学校や漫研の友人も各地で自動車学校に通い免許取得を目指していた。
ある日、その話題で会話していると耳慣れぬ「単語」を耳にした。
「おれ、明日から『無線』やねん」
「え?『無線』ってナニ?」
正直「初耳」だったのだ。
それは「練習コース」にて受講者自身が一人で「教習車」に乗り込み、車内に設置されている「無線」によりコースを見渡せる場所等より監視する教官の指示により運転を練習するという当時は最新のシステムだ。
私の通う「オンボロ自動車学校」には当然、その「無線」とやらの教習は無かったのである。
それからは教習の度に「無線」が我が学校にない旨を教官に訴え続けた。 他の友人の「無線教習」が羨ましくて仕方がなかったのである。
するとある日、とある年配の教官がこう言った。
「よっしゃ、わかった。 MARU君、明日はお待ちかねの『無線教習』や! いつもの時間にこの教習車に乗って待っておけ」
次の日の教習定時、コースの発車地点のその教習車に私は乗り込んだ。
教官の姿はなく、ただ後部座席に大きな段ボールの箱が乗っており、それには『無線装置 精密機械に付き触るの厳禁 開けたらあかん!」と黒マジックの大きな文字で書かれていた。
ふ~ん。 友人から聴いていた「無線」と少しイメージが違うと一瞬思ったのだけど、すぐ「教習時間開始」を告げるブザーの音が教習場内にこだました。
「ほな、行こか」
後ろから突然、昨日の年配の教官がしたので飛び上がるほど驚いた。
そうか。「無線装置」が後ろに有るのだから、当然「無線」の声は後ろからするのいだなと納得した。
「はい。も少しスピード落として。そこの踏切で一旦停車して坂道発進やって」
時々、後ろの段ボール製「無線装置」の上の蓋が開いて鏡のようなものが一瞬出たり入ったりするのが気に掛かる。
すると
「こら! 運転中は前に集中せんか! 後ろばっかり気にしたら絶対アカンで!」
と怒られた。
「今日はバックミラーも視んでも宜しい」
「でも教官、次は『縦列駐車』で、後ろを目視せなアカンのんちゃいますの?」
「屁理屈はエエから黙って運転せぇ! そこらへんは『勘』でエエのんぢゃヴォケ!」
もうムチャクチャでござりますがな。
当時は真夏であり、まだ教習車にはエアコンすら無い時代であったので、車内の温度はかなり高いものであった。
そのうち「無線」は口数も少なくなり、教習の終わりには「あ、暑い…熱い…」との譫言しか聞こえなくなっていた。
流石最新の「無線装置」とはいえ、熱には弱いのだなと勉強させていただいたのだ。
翌日、顔面中に「汗疹」を作りグロッキー気味だった教官殿。
お蔭様でBADsMARUは免許を頂き、今日も「交通法規」をブチ破ってカッ飛んでおります!(免停4回)
ってウソぢゃヴォケェ
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