【12月05日の「俺の名は…『地獄を覗き損ねた男』!」
《この日記の内容は全てフィクションであり、実在のいかなる団体、個人とも関係ありません》
冬でる。
歳末である。
某辺境に存在するとある会社のとある部門にも「忘年会」の季節がやってきた。
12月某日。
会場はとある日本屈指の大都市。 ちなみにその「大都市」での開催を最も推したのは出席者のP吉であるが、彼は当夜ドタキャンをかまし大いに顰蹙を買うことになる。
午後五時よりとある居酒屋にて、出席者総勢6名の宴会は開催された。
メニューは「二時間食べ放題呑み放題コース」
和やかな宴たけなわながら、終宴の時間を迎える。
ここで出席者の一人の巨躯の持ち主が集団を離脱。
その言い訳は「今からモンスターをハントしに行く」という理解不能なものであった。
五人となった集団の中で誰が言い出すでもなく
「少し呑み足らないので、もう一軒行こか?」という発言に誰も反対する者はいなかったという。
その時、御機嫌な彼ら五人に近づく人影があった。
「そこで『ガールズBar』やってる者ですけど、一人2時間2000円飲み放題なんです~♪」
「そんなん云うて、ほんまはボッタクリちゃうのん?」
「そんなこと云われたらマミちゃん悲しいぽん♪」
「そうかそうか。誰や、マミちゃん泣かすのは! よっしゃよっしゃわかったわかった。お店まで連れてってぇな」
「マミちゃん、ギザうれしす♪ こっちこっち」
五人は薄暗い路地の奥の一軒の店に吸い込まれていった。
入店して水割りで乾杯をしてしばらくすると、先程の可愛いマミちゃんの姿がかき消すようにいなくなる。
他の客は誰も居ない。
店のソファに居座るのは、如何にも「百戦錬磨」とも見える元「おねえちゃん」。
「一杯いただいてもいいかしらン?」
「黙れババァ。便所の水でも飲んどけ」とは言えない。
そこに日頃、地元の「キャバクラ」で鍛えた五人の男たちの隙があった。
「じゃ、勝手にいただくわん。」
元「おねえちゃん」はビールをゴクゴク呑みだした。
五人のうちの一人が何気なく「お品書き」の後ろを見て目を剥いた。
そこには「生ビール7000円」と記されていたのである。
彼は「この店、ヤバいでっせ」と小さな声で仲間に告げた。
「…そうか。まだ入って二十分もたってないけど仕方ない。
ご免やけど清算してくれるか?」
ノロノロしていた従業員が「おまたせしましたぁ」と持ってきた請求証には
「金〇〇萬円也」と記されていたという。
「アフォかぁ!? こんな銭が払えるかぁ!」
ボーイは言う
「あ、そうですか…少々お待ちください」
いきなりドアが開いて入ってきたのはガラの悪そうな二人のいかついオッサン。
「お客さん、なにか問題でも?」
ドスの利いた声で威圧する。
その時、五人の目と目がが錯しアイコンタクトが一瞬で交わされた。
「(逃げるで!)」
脱兎の如くドアを飛び出し一目散に逃げようとする彼ら。
「あ、待たんか。このヴォケ、食い逃げする気か!」
怒号を吐き散らしながら追尾するチンピラ二人。
大都会の雑踏に一大逃走追跡劇の幕が上がる。
しかし現実は意外な展開で終わるのだ。
五人の中で一番の長身である元バスケットボール部「琵琶湖怪人」氏が寄る年波には勝てず、ついに追手の一人に捕まってしまったのだ。
「ゴラァ!ナニ逃げとんねん!」
もう殴るわ蹴るわ…「怪人」の側に立てば「殴られるわ蹴られるわ」。
しかし暴行する二人も流石「プロ」。 後で不利な証拠となる顔面には、決して手を出さなかったという。
「あと、逃げた四人の名前も吐いてもらうで!」
これには流石に参った。
「わかったわかった。 払うわ…払ろたらエエねんやろ」
彼は二人の追手に後を付かれ、ATMの前まで連行された。
「〇〇万円でエエねんな」
「…いや、正確には〇一万円や」
「その一万円は『追いかけっこ代』かぃ?」
もうこの時点でジタバタしても仕方がない。
彼は〇一枚の〇万円札を追手の一人に手渡した。
「おーきに。また来てや♪」
その無表情な男はハイエナのような笑みを初めて浮かべたという。
ああ。
「フィクション」やけど書いてて怖いわ…
余談(これもフィクション)
彼らは翌週の月曜日、会社で顔を合わせてこう言ったという。
「ああ、あの場で酔っ払った〇さんが居ったら怒り狂って大暴れするとこやったわ。
居らんでヨカッタヨカッタ…」
い、いや…
ほんまフィクションですから
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